2005年6月7日。株式会社ハートが布団・タオル・肌着など34品目で、オーガニック繊維製品の国際認証を取得した。
オーガニック先進国の欧米ではその厳格な生産基準に基づいて農場から最終製品まで生産・加工・管理・流通され、「オーガニック」といえば、農家や工場など 全工程でどこの誰がどのようにして作ったものか、原料の農薬のみならず、製造加工段階での有害化学薬品不使用、製品から産地まで製造履歴がトレースできる もの、という認識である。農家の人や製造にかかわるすべての工程で管理記録が義務づけられており、最終製品になるまでに有害な化学物質(農薬・化学薬品) が使われず、製品のみならず、生物や環境をも汚染していないことが第3者的立場の認証機関や検査機関によって証明されていなければならない。また繊維製品 の場合、製品総重量の95%以上がオーガニック素材、残り5%未満についてもその生分解性や安全性を確認しなければならない。
< オーガニック製品 >
今回のハートの認証はエコサートQAIジャパンによるもの。これまでに「原綿」や「糸」のオーガニック認証はあっても、加工を含める繊維製品の認証は世界
初である。エコサートQAIジャパンはフランスに基点をおくオーガニック認証団体のエコサートとアメリカのNSF-QAIの世界でもシェアと知名度の高い
2つの認証機関のグループ会社であり、その認証を受けたハートの製品の信頼性はとても高い。
今回の企業取材では、株式会社ハートの山岡社長(写真左)と株式会社フジライフの壱岐工場から板谷氏(写真右)、千葉工場の川野氏(写真中央)に、申請から認証までの1年8ヶ月の苦労とこれからの意気込みを語っていただいた。
「きっかけは子供の喘息でした。当時5歳の長男が無呼吸状態となり、救急車で病院へ運ばれた時のこと。何とかして助けたい、子供の肌に直接触れるものだから安全で肌に優しい布団を作りたい、だからごまかしがきかないんです。」
17年前、親の経営する工場で抗菌の布団を作っていた山岡氏は、息子さんの喘息を少しでも良くしようと奥様と二人で「子供が安心してよく眠れるような布団」を作る会社を設立した。これが「ハート」の始まりである。
救急車で運ばれた息子さんは、幸い命は取り留めたもののその後アレルギーで苦労されたとのこと。その出来事をきっかけに、アレルギーの子供たちが安心して 眠れるような布団を作りたかったのである。たとえばアトピーの子供は痒みがでたりと、よく眠れていない。つまり言い換えれば「眠れるようにすれば、体の免 疫が少し変わるのではないか」と考えたのである。
こうして、眠れる工夫を施した布団を作り始めたハートだったが、問題はどこでその布団を売ればいいのかということだった。当時は高級羽毛布団か中国産の安 いものが主流のとき。一般のお店でも自然派のお店でさえも肌にやさしい綿の布団を扱っていなかったのである。アトピーや喘息で困っている人たちは肌にやさ しい布団はどこで買えばいいのだろうか、そう疑問に思いながら、布団を入れたトランクを担いで全国の自然食品を扱うお店をまわり、熱心に布団の良さ・大切 さを説明していた。
「始めて栃木で布団が売れたとき、その社長さんがこうおっしゃいました。「布団のことはあまり良くわからないけれど、一生懸命やっている姿がわかったから買います」その言葉がとてもうれしかったんです。」■ 世界初のオーガニック繊維製品
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![]() *すべての製品には認証団体と 認定番号が記載される。 |
認証に1年8ヶ月かかった。一番苦労した事はどんなことであろうか。
「もともとのハートの商品自体が難しい注文だったんです」
壱岐工場の板谷氏は笑いながら、そう仰った。
認証取得以前から、ハートの布団は抗菌・無蛍光。とくに蛍光増白剤は皮膚刺激性があり、しかも付着して移っていくので、たとえ使用していない製品にも付着
する可能性がある。そのためハートでは、糸・生地・布団を作る各協力工場すべてで製品は別管理され、厳重なブラックライトチェックを行っているとのこと。
こうした徹底的な工場ラインをすでに確立されていたため、今回の認証のために大幅にラインを変更する必要がなかったという。
それでも移行が簡単だったかというと、そうではない。もともと難しかった注文にさらに厳しい管理が加わったのである。現場の方はとても苦労されたに違いない。
現 実問題として、量が少ないことや経済的なことなどで、オーガニック繊維製品だけを扱う工場はない。もちろんオーガニック製品をつくる週は他の製品はつくら ず、工場も機械も徹底的に清掃するのだが、それでも一般綿の布団とオーガニック布団を同じ機械を使うということは、絶対に通常の綿とオーガニックの綿が混 ざらない状況を作らなくてはいけないのである。
たとえば、つくった
布団の最初の何枚かは、通常の綿も混ざる可能性があるのでオーガニックコットンの布団としては売れないとか、天井を通るパイプの上に綿ぼこりがあった場
合、そのホコリがいつオーガニックコットンの上に落ちて混ざってしまうかわからないから認証がおりないとか。
清掃のためにコロコロ転がす粘着式シートをつかってキレイにしようとすると、その粘着成分に問題があったために使えないとか。少しでもオーガニックで無く
なる可能性があるものは徹底的に排除された。
さらに、オーガニック認証で欠かせないことが「記録」である。
「ハンドクリームを塗らない、塗ったら工場に入る前に石鹸で洗う。合成洗剤を使用して家で食器を洗ったら必ず石鹸で洗うなどを徹底しました。そして手を 洗った時間や布団をつくり始めた時間などそれらをすべて記録して、どこで誰が何をしたかをすべてをたとえ五年後にその日をさかのぼってみても追跡可能にし なくてはいけない。これらをパートの方を含む全員に伝えるのがとても大変でした。」
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オーガニック製品をつくり続けるということ
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*コットンをよって糸に するのを見せてくださった。 |
コストも手間も5倍から10倍以上かかるからといって、5倍以上の価格で売れるわけではない。それでもなぜオーガニック布団を作るのか。
「きっかけが自分の子供でしたから、ごまかしができないんです。使命感のようなものですね。それに、認証をとることで工場はきれいになるし環境も汚さない。これからは色々な企業が認証を取り始めて欲しいです。私のように 苦しんでいる子どものためにというきっかけが無い人は、真似から始まってもいいのではないでしょうか。そうすれば環境が良くなり、そして子どもや子孫、救いを求めている人を守っていけるのだと思います。」
今 回、認証の記者発表会で、お子様のことを語りながら山岡氏が流した涙がとても印象的だった。 認証をとったことが終わりではなく、継続していかなくてはいけないこれからが、むしろ一番大変なのかもしれないと語る山岡氏。人のため環境のために製品を 作り続けるハートをこれからも応援していきたい。
<取材後記>
コッ
トンの収穫をご存知ですか?収穫時には、人工的に葉や茎を枯らさないと、葉の葉緑素が収穫時にコットンについてシミになってしまうので枯葉剤を空中から散
布して葉を枯れさせるそうです。収穫した後の加工には、化学糊、漂白剤、化学染料、防腐加工剤、柔軟仕上げ剤など様々な化学薬品で処理するとのこと。そう
聞くと、毎日身につけている洋服も寝ているときの布団も、恐ろしくなってしまいますよね。
日本オーガニックコットン協会のウェブサイトによれば、世界の耕地面積の2.5%に満たないコットン畑で使われる農薬の量は、農薬使用量全体の約25%に
及び、土壌や地下水の汚染、農民の健康被害などの問題を引き起こしているそうです。逆にいえば、オーガニックコットンがもっと広まれば、農薬の量は一気に
減るのではないでしょうか。
そして、環境破壊の要因として、農薬以上に問題になりつつあるのは、工業排水や排煙、不法投棄などで放出される有害化学薬剤の環境・海洋汚染です。厚生労
働省は、妊婦や妊娠の可能性のある人は、マグロを食べ過ぎないようにと注意を呼びかけています。胎児への影響が懸念されるメチル水銀が含まれているからで
す。こうした海洋汚染の原因は農薬のみならず、様々なものの製造工程や暮らしの中で使用される有害化学薬剤です。作る側、使う側がともに、環境に何が起
こっているのかをよく見つめなおし、改善していくことが必要ではないでしょうか。 (金沢)
■INFO |
■リンク
エコサートQAIジャパン
日本オーガニックコットン協会
■取材した人:秋元一宏、金沢玲美
■取材された人: 山岡俊文氏、板谷亘氏、川野丞氏
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