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国連温暖化防止会議 (COP11) 参加レポート


ソーラー・ジェネレーションメンバーとともに4万5千人が参加したと言われる温暖化防止マーチに参加する筆者
(写真左) ©Greenpeace

グリーンピース・ジャパンで、気候変動問題を担当しています中島正明と申します。昨年、カナダのモントリオールで開かれた国連温暖化防止会議にNGOとして参加してきました。

最近、日本のみならず、世界各国で温暖化の影響であろうという現象が顕著に見られるようになってきました。最高気温記録の更新、黄河の干上がり、グリーンランドなど極地の氷の融解、異常気象の激化など、これまでの科学者の常識を超えて、温暖化、そしてそれに伴う気候変動が進んでいると言われています。


■気温上昇幅を2℃未満に抑える事が必要!

世 界平均の気温上昇幅が約150年前と比べて2℃を超えると、悪影響は急激に増加すると言われています。言い換えれば、私たちは2℃の気温上昇を超えないよ うに、対策を取ったほうがいいという事です。よく言われる表現ですが、2℃を超えさせてしまうことは、何百万人、ひどくなると数千万人もの人々が毎年温暖 化のリスクにさらされることに等しいのです。こうなると、私たちが直接的にうける被害はもちろんの事、グローバル化が進むこの世の中で食糧不足など間接的 にうける影響も拡大していきます。しかし、2℃でも甚大な被害を受ける人々がいることも忘れてはなりません。世界保健機関(WHO)は、2000年には気 候変動の影響で15万人がすでに命を奪われており、この数は増加していくと警告しています。

先 ほど2℃と言いましたが、実はすでに過去100年間で0.6℃は上昇しており(高緯度地域では2℃以上のところも!)、これまでに大気中に排出された温暖 化ガスがじわじわと働き、あと0.6-.0.7℃の気温上昇は免れないとされています。つまり、残りは0.7-0.8℃だけであり、もう殆ど大量の温暖化 ガスを排出しつづける余裕は私たちには残されていないという事です。2℃未満の気温上昇幅に抑えるためには、日本を含む先進国は2020年までに30%、 そして2050年までには約80%の削減を進めることが必要と言われています。そして、途上国を含めた世界全体では、同期間に50%を削減しなくてはなり ません。このため、対策を今すぐに進めていく事が大切なのです。今回のモントリオールでの会議は、こうした温暖化対策の緊急性を背景として開催されまし た。


温暖化による急激な氷の融解が確認された。

写真上:1928年に撮影されたパタゴニアのウプサラ氷河 © Archivo Museo Salesiano
写真下:2004年1月撮影の同氷河  ©2004-Greenpeace/Beltra

 

特に重要な意味をもっていたモントリオール会議


会議場となったパレス・ド・コングレ
©Greenpeace

本会議場内の様子この場で交渉が進められた
©Greenpeace

こ の会議は、温暖化防止のための国連条約である、「国連気候変動枠組み条約」に加盟する国々の会議で、毎年一度開かれているものです。正式名称は、「国連気 候変動枠組み条約締約国会議(通称COP:コップと読みます)」で、今回は第11回目の会議(COP11)となりました。また、前述の条約の補完的な役割 をもち、条約よりもう少し詳細な取り組みについて定めている「京都議定書」という国際協定が、昨年2月に発効し、正式な国際法となりました。このため、京 都議定書の締約国の第一回の会合も同時並行で開かれました。

私 たち、グリーンピースの代表団は、私を含め30名ほど。そして、これに加えて、「ソーラー・ジェネレーション」というグリーンピースの若者ボランティアグ ループも30名近く参加しました。ソーラー・ジェネレーションのメンバーは、会議場内で展示やその他様々なイベント、そしてとても寒いモントリオールで太 陽エネルギーを用いて作ったコーヒー・バーを設置し、集まる人々に温暖化について話すなどの活動を行ってくれました。

今 回の国連の温暖化防止会議については、国内で事前に報道されることもほとんどなかったのですが、その重要度はこれまでにないほど高いものでした(もっと もっと事前の情報普及をしっかりとするべきであったと反省しています・・・)。この会議が万が一失敗に終われば、温暖化を十分に防ぐ事はもう不可能だろう という印象を私は持っていました。このため、会議前からかなり精神的に緊張状態が続いていました。

な ぜ、今回の会議が大切だったかというと、いくつかの理由があります。その中でも、最大の理由は、将来の温暖化防止国際制度の方向性を決定するという重大な 課題がモントリオール会議には課されていたことです。地球温暖化、気候変動問題は、すぐに解決するような問題ではなく、何十年もの期間をかけて、しかしで きる限り早い段階での対策を取っていく事を必要とします。このため、現段階でしっかりと初めて、大幅な削減を可能とする将来の国際制度を構築することが必 要です。つまり、今回の会議の結果がどのようなものになるかが、温暖化を十分に抑制できるかどうかをある程度決定する含みをもっていたのです。


会議場内でイベントを行うソーラー・ジェネレーション。
真ん中にある手のひらのオブジェには"Hands Up for Kyoto II "と、京都議定書の強化継続を求める言葉が書かれ、これに各国政府代表者がそれぞれの国旗を次々に掲げた。これには京都議定書への期待が高いことが伺え た。
©Greenpeace

温暖化防止に必要不可欠な京都議定書

前 述した京都議定書は、これまで大量の温暖化ガスを排出してきた工業先進国が先に対策を進めていくべきとの観点から、先進国の排出量を1990年の時と比べ て約5%削減することを定めた国際協定です。そして、それを2008年から2012年の間(これを第一約束期間といいます)に達成することとなっていま す。お気づきかもしれませんが、前述したように2℃未満の温暖化に抑えるためにはもっと大幅な削減が必要であり、5%というのは本当に最初のスタートでし かありません。しかし、現段階では2013年以降の京都議定書の第二約束期間の削減目標などは、まだほぼ白紙の状態です。このため、京都議定書では 2013年以降どうしていくのかについて2005年から話し合いを開始することを定めています(厳密には先進国の次期約束期間以降、つまり2013年以降 の目標について見直すとしています)。そして、昨年末のモントリオール会議がこの話し合いを始める場でした。この会議でしっかりとしたスタートを切ること ができるかどうかが、十分に温暖化を防止できる制度を確立するためにはとても重要なことだったのです。

会議の焦点は京都議定書をベースとして、さらに対策を強化した上で、2013年以降の将来の国際制度を作ることができるかどうか。そして、温暖化の影響を特に受ける開発途上国への支援体制を整備していくことができるかどうかでした。

な ぜ京都議定書をベースとした方がいいのか?それは、京都議定書はとっても意義のある大切な協定なのです。なぜかって?その答えのひとつは、温暖化の性質を 考えるとわかります。温暖化の防止には、温暖化ガスを削減する事が必要ですよね。そして、削減といった時には、目標を設定し、その達成を一定の指標をもっ て測りながら、対策を進めていくわけです。この時に一番大切なのは、全体の総量が削減されているかどうかです。しかし、温暖化ガスの削減は、エネルギー問 題、経済問題とも密接に関係してくるため、あまり対策を取りたくない人たちもいます。こういう人たちの中には、削減量ではなくて削減率(例えば、一定生産 量あたりの温暖化ガスが前より少なくなっていればいいというようなこと)が達成されていればいいというような指標をもちいることで、義務を達成したことに するという制度も考えられます。しかし、これでは全体の総排出量は増える可能性が非常に高く、そうなると温暖化の防止にはつながりません。京都議定書は、 率ではなく総量を削減する事を、目標達成の指標として定めています。この点で、極めて重要な要素をもった国際合意です。

ま た、温暖化問題は、環境問題という側面だけでなく、経済問題の側面も多分に有しています。このため、経済活動の中に温暖化を削減するための要素を盛り込ん でいかなければなりません。京都議定書には、京都メカニズムと言われる市場取引メカニズムが制度として盛り込まれています。削減を行うことによって、いわ ゆるクレジットを取得する事が可能になり、温暖化ガス排出総量を削減する義務がある環境の中でクレジットの取引をおこなうことで、費用対効果の高い条件 で、経済活動においての削減を行う事ができるようになり、実効性のある対策の促進が期待できます。

京 都議定書はこうした温暖化防止に必要かつ有効な制度を有しています。このような高度な制度を、様々な意見を持った多くの国々が参加する交渉の場で決定する 事は至難のことであり、実際京都議定書とその運用ルールの策定には10年もの年月が費やされてきました。このため、緊急な対策が必要な温暖化の防止のため には、2013年以降の次の約束に関しても、この実効性のある京都議定書をベースとした制度を強化、拡大する事が有効かつ大切であると考えられます。そし て、今回の会議では、将来の温暖化防止国際制度において、京都議定書の強化、継続につなげることができるかどうか、ここにひとつの大きな焦点がありまし た。

会議場横に設置したソーラー・コーヒーバーとソーラー・ジェネレーションメンバー
©Greenpeace

掲示板に国旗を掲げる日本の小池環境大臣
©Greenpeace

大きな成功を収めたモントリオール会議

さ て、モントリオール会議に戻りますが、結論から言うと今回の会議は大きな成功であったといえるでしょう。私はこれまで10を超える地球温暖化に関する国際 会議に参加してきましたが、これほどの成功を収めた会議は体験した事はありませんでした。環境NGOや取り組みに前向きな政府や研究者が一丸となって、こ の会議を成功へと導いていくその過程は、今思い出しても身震いするほどのダイナミズムをもっていました。その成功要因としては、温暖化の影響が顕著になっ てきて対策の緊急性と必要性がより認識されてきた事、温暖化ガス削減をもたらし環境保全市場の育成に貢献する京都議定書への期待がかなり高かった事、そし て、会議の議長国であるカナダの大きなリーダーシップがあったことが挙げられるでしょう。

今回の会議は、議長でも あったカナダのディオン環境大臣の提唱により、3つのテーマが設けられました。それらは、3つのi(アイ)とされ、(i) 京都議定書の実施体制を完全に整える事(implementation)、(ii) 条約および議定書のルールを改善する事(improvement)、そして(iii) 将来の制度を革新していくこと(innovation)でした。

前 者ふたつについては、説明が長くなるので簡略しますが、(i)の「実施」に関しては、会議の決定により京都議定書実施の準備は完全に整いました。これまで の交渉では、京都議定書の運用ルールについて話し合いが行われてきたのですが、これまでの総まとめとしてそうしたルールの正式な採択がなされ、国連の下で の制度としてすぐに開始することができるようになりました。 (ii)の「改善」では、途上国支援などにおいて一定の成果を収める事ができたと思います。途上国支援制度は、なかなか実質的な支援措置の実施に結びつい ていかない難しい問題です。しかし、開発途上国での対策を進めていくための制度構築が、少しずつ進められ、半歩前進したと言えるでしょう。

そ して、最後に(iii)の「革新」ですが、ここが一番の焦点であり、大きな成果を収めることができました。米国のブッシュ政権が温暖化対策に対して消極的 である(それに対して、国内の州や市などの自治体はそうではなく、積極的にさまざまな対策をとっています)ことは、みなさん、よく聞かれることかもしれま せん。そして、今回の会議でもそれは例外ではありませんでした。ブッシュ政権の代表団は途中で交渉の場から立ち去るなど、将来の取り組みを促進するための 会議の進展を阻止とみられる行動に出ました。

この「革新」に関しては、大きく分けて2つの懸案がありました。ひとつ はいかに本当の対策前進につながる京都議定書の強化、継続をおこなっていくのか(前述しましたが、これが一番大切な事です)、もうひとつが将来の制度に関 して米国も参加する条約の下でどう取り組んでいくかということです。

大量排出国(世界全体の4分の1を占める!)で ある米国の参加問題ですが、ブッシュ政権率いる米国は、気候変動枠組み条約には参加していますが、京都議定書に参加していません。そして、現在のブッシュ 政権が京都議定書のような本当の取り組みにつながる制度に参加してくる事はほぼ不可能です。つまり、米国の参加を取り付けるということは、実質何も意味の ないものに合意することに他なりません。これでは、せっかく京都議定書が動き出したのに、それをもう一度白紙に戻すということになってしまいます。このた め、現段階では積極的に進めていける国々で京都議定書をベースとした実効性のある対策をしっかりと構築しながら、同時に米国国内での機運を高め、米国政府 の参加を引き続き促していく事が大切です。実際、州政府などの自治体はかなり積極的な動きを見せていて、米国のシンクタンク曰く「水面下では変化を起こす ための作業が進んでいる」とのことです。そして、2008年の米大統領選が大きな鍵を握っているとも言えるでしょう。

今回の会議では、ブッシュ政権率いる米国は京都議定書に参加してないため、前者の京都議定書の関連事項について正式に口を出すことはできません。しかし、正式にはそうであって、実際は水面下で様々な働きかけを、日本政府を含めて行っていると思われます。

こ ういう状況の中、先ほどのふたつの懸案のうち、大切な京都議定書の強化、継続に関して、これからどういう方式で議論を行うかが決定されました。そして、そ の内容は、別個に作業部会を設けて、2008年から2012年の第一約束期間とその次の第二約束期間の間が空かないように、制度の決定を行う事が合意され ました。すこし難解になりますが、要はしっかりとした制度構築に向けてよいスタートが切れたことを意味します。これは、当初から環境NGOが求めてきた事 であり、私は、NGOのいわゆるロビー活動がもたらす会議への効果が非常に肌身に近く感じました。会議終了直後のプレスリリースに、その時の状況を書いて おきましたので、ご関心ある方はご一読ください。(http://www.greenpeace.or.jp/press/2005/20051210_html

 そして、先ほど挙げたふたつのうち、後者の米国を含めた条約の下での取り組みに関しても、意見交換を行っていくという非常に弱いものですが、合意がなされました。いわば、ほぼ全ての必要事項に関して合意ができたことになります。

  日本政府は、当初はその交渉の立場が積極的とは言えないものでした。しかし、結果的に米国を置き去りにし、さらなる削減を可能とする制度構築へのドアを開 くことに合意しました。この意味では、大きな貢献をしたと言えます。こうした態度は他の対米外交問題では見られない事なのではないでしょうか。


しかし、これからが本番!

今 回のモントリオール会議では、現段階でできる事はおおむね達成されました。その意味で、成功でした。しかし、これはあくまで適切な議論の方向性を決定づけ ることに成功したという事であり、あくまで良いスタートを切れたという事に過ぎません。本当に大切なのは、今後の交渉の内容とその行方であり、まだまだ私 たち、そして日本政府にかかる役割と責任は大きなものと言えるでしょう。

次、今年2006年の国連温暖化防止会議は11月中旬にケニアで開催される予定です(準備会合は5月にドイツで開かれます)。この時にどのような話し合いが行われているのか、注目してみてください。私たちの進んでいる方向を垣間見る事ができると思います。

(本稿の内容について、質問等ございましたら、masa@greenpeace.or.jpまで電子メールにてお送りください)

 

 

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気候変動問題担当 中島正明氏
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on 2006年1月 1日 in お知らせ・最新情報