LOHAS WORLD

LOHASビジネス会議「LOHAS15」参加リポート(コロラド州ボールダー)

取材/文:Sam Goodman.訳:tomoko Goodman

今回で15回目を迎えるLOHASビジネス会議「LOHAS15」、今年もLOHAS発祥の地ボールダーにて開催されました。622日(水)〜24日(金)の会期中、素晴らしいお天気に恵まれ、そしてそのお天気よりも更に素晴らしい人たちと出会い、最先端のLOHASトレンドに触れてきました。各種セミナー、非常に積極的なネットワーキングイベント、そして先進ロハス企業とその企業が生み出すプロダクトをレポートします。


■開催概要

名称:LOHAS15

日時:2011622日(水)〜624日(金)

場所:St. Julien Hotel, 900 Walnut Street, Boulder, Colorado 80302, United States

主催:Conscious Media(コンシャスメディア,コロラド州)

公式サイト:http://www.lohas.com/forum

参加者数:450人(内訳、社長/CEO/所有者40%、マーケティング/セールス18%、ディレクター/マネージャー15%、投資家/起業家16%) 

会議会場となったのはボールダー中心部に位置する高級グリーンホテル、セントジュリアンホテルの大広間。大きなスペースを間仕切りし、3つのセミナールームに。セミナールームの外にはコートヤードと呼ばれるホテルの中庭があり、 食事と歓談の場が用意されています。設置された多目的テントとパティオはネットワーキングに興じる人々で溢れています。その他に試供品を陳列したギフトルーム、企業が出展するミニ展示会などもありました。

Day1 622日(水)

会議初日は夕方からはじまりました。LOHASの基本的なコンセプトについてのディスカッションが行われ、カクテルスタイルのウェルカムレセプションへと続きました。LOHASの基本コンセプトは過去何度もこの会議に出席して学んでいるので今回は省略し、まっすぐギフトルームに向かいました。ここには会議に出席したLOHAS企業やスポンサーから様々な試供品が提供され、参加者は思い思いに商品を手に取り自由に持ち帰ることができます。私もたくさんの試供品をもらってきました。ずっしり試供品の詰まったエコバッグを肩に提げ、ホテルのコートヤードへ移動しました。ボールダーのシンボル、フラットアイアン山の美しい姿を一望できる素晴らしい中庭です。ネットワーキングに興じる人々で賑わっていますが、私はいつまで経ってもこの場の雰囲気に慣れません。見知らぬ人の輪に入って行って自己紹介をするという最初のきっかけにいつも勇気を必要としますが、それでもイベント開始後早々に何人かの興味深い人物と出会うことができました。遠地からわざわざ今年の会議に出席するためボールダー入りした人たちの動機などに耳を傾けているうちに、ちらほらと周りに地元ボールダーの顔見知り達が集まり出しました。雑誌「エレファント・ジャーナル」編集長のウェイレン・ルウィスが近づいて来て会議2日目の夜に企画しているというプライベートパーティへの招待状をくれました。また隣では友人でリニューアブル・チョイス社代表のクエール・ホデックが偶然10年ぶりに再会した女性参加者と話に花を咲かせていました。当時彼がバーニング・マン祭りに行こうとヒッチハイクをしているところを助けられた仲だそうです。10年経ってもすぐにお互いの顔を認識できるなんて素敵ですね。そんなユニークでリラックスした人々が参加している会議、それがロハス会議なのです。

Day2 623日(木)

初日の夜はイベントでのお酒も手伝ってぐっすり眠りました。二日目早朝の目覚めは健やかでしたが、深酒が響いてうっかり寝坊をし、7時から行われるモーニングヨガに遅刻してしまいました。ヨガが終わる頃やっと会場に到着し、みなさんとブッフェスタイルの朝食をコートヤードでいただきました。暢気に写真を撮ったりしていたら時間がなくなり結局スクランブルエッグとフルーツだけを喉に流し込んでセミナー会場へ向かいました。


講演名:「自分自身を変えて世界を変えよう-Changing Yourself, Changing the World: The Path of Purpose and Destiny」

ジェーン・ヒューストン氏/心理学博士、作家、ユニセフアドバイザー。ヒラリー・クリントンの著書『I t takes a village』の執筆にも協力した経歴を持つ。

ロハス会議最初のセミナーは心理学者のジェーン・ヒューストン博士によって開始されました。博士はまず近年の女性起業家の活躍について触れ、現在新ビジネスの70%が女性の起業家によって起業されていると指摘した。大学卒業者の数も女性が男性を上回っているそうです。「これは今後男性と女性が新しい役割、そして世界的な問題を解決する際の新しい相互関係を持ち得て行くことを示唆します。女性の活躍が増せば女性の視点による問題解決という新たな切り口が生まれます。また時代はソーシャルメディアを通じて世界的な繋がりを実現しています。これはまさに地球の全体のバランスをリ・スケーリング(再度大きさを変更)する作業であると言えます。私たちは素晴らしいジャーニーの途中。でもそれに気づいている人はいない。騎士キャメロットがその偉大な探求の途中に彼自身がそれに気づかなかったのと同じことです。」そう博士は話を締めくくった。

会場からスタンディングオーベーションを受けたヒューストン博士のお話に大変感銘を受けそして刺激を受けました。しかし、講演後このレポートを書こうと自分のメモを見返したのですが、なぜあんなにも感激したのか具体的な理由がわかりません。大きなインスピレーションを受けた瞬間というものはしばしばこのようなのかも知れません。その場にいるときにだけ感じられる感銘、その一方でその感銘はたくさんのアイディアが繋ぎあわさった複雑なものなのです。それでもやはり彼女は会議のオープニングを飾るにふさわしい偉大なスピーカーだったと言えます。

講演名:「薬のトレイルのストーリー-Tales From The Medicine Trail 」

クリス・キルハム氏/ディシン・ハンター、ナチュラルメディシンの発見と市場開拓を手がける。CNNテレビ局は彼を「ナチュラルメディシン界のインディー・ジョーンズ」と呼ぶ。

次のスピーカーはメディシン・ハンターの異名をとるクリス・キルハム氏。キルハム氏は世界中を旅しながら薬として使用できる新しい植物を探すという冒険を職業としています。現在リサーチ中のナチュラルメディシンについての話を聞きました。

  • カバ(Kava根が鎮静作用を持つコショウ科の植物。南太平洋の島々が原産で主に茶葉として利用され土地の共同体で食されてきた。しばしば土地の紛争解決手段としても用いられた。
  • マカ(Macaペルー、アンデス地方のハーブ。滋養強壮、精力増進、不妊治療などに優れたスーパーフード。
  • ロディオラRhodiola南中国原産の年間2ヶ月しか栽培できない貴重なハーブ。非毒性で不眠症等の原因とならない抗うつ剤として知られる。
  • キャッツクロー(Cat's Claw: アマゾン流域に生息。抗炎症性で免疫システムに効果がある。

これらの薬草には伝統的な調合薬としての際立った特性があるにも関わらず特許を取ることができません。このため製薬会社は薬草類から利益をあげることができず、それゆえに奨励もされないのです。それどころかこれら製薬会社によって代替ハーブ薬品に対しての恐怖心を煽り誤解を招くような内容の論文が作成され公に掲載されたりもするそうです。「この時代を生きる私たちはタフさと強いエネルギーを必要としています。これらの植物は私たちをポジティブな人生へと導いてくれるかも知れません」とキルハム氏は締めくくりました。

ヒューストン博士の講演に引き続き、キリハム氏の講演も大変楽しませていただきました。キリハム氏もやはり会場からスタンディングオーベーションを受けました。二人中二人とも!この講演で最も興味深かったのは、製薬業界が病気そのものとその治癒スタイルまでを絶対的に支配しているという構図です。製薬業界のこの支配力はアメリカにおける大きな問題であり、今後日本でも同様の状況が発生するのではないかと危惧して止みません。

対談名:「ロハス最新消費者トレンド-The Latest LOHAS Consumer Trends: Point/Counterpoint」

ナチュラル・マーケティング・インスティチュート社

ロハス市場を最初に発見、開拓したマーケティング会社。12年間に渡り世界23カ国、5,000万人へトレンド調査を行いデータを収集している。ペーパーバッグの衣装をまとった同社マネージングパートナーのスティーブ・フレンチ氏とプラスチックバッグの衣装のロハスビジネスディレクターのグイン・ロジャーズ氏の対談形式でロハスの最新トレンドが発表されました。対談はいくつかのテーマに沿ってポイント(一つの切り口)とカウンターポイント(もう一方の切り口)を互いに発言するという方法で進められました。

- 世界同時不況がロハス市場にもたらした影響とは?

ポイント:相変わらず「グリーン」は強いキーワードだ。家庭用自然用品ブランド、セブンス・ジェネレーション(http://www.seventhgeneration.com/)などのブランドはいまだかつて無いほどの勢いを保っている。不況によって人々の購買の動機が鮮明になった。「グリーンである」ことが消費者の購買活動の第一の理由には必ずしもならない。第一の理由はいつもその商品の便利さ、有用性である。

カウンターポイント:消費者は価格に敏感である。消費者の70%が価格によって購買を決定すると回答している。一商品に対して割り増し料金を支払ってまでグリーン商品を買うという意欲のある消費者は2007年レベルと比較して約半分にまで減っている。


- 私たちは更にグリーン化しているか?

ポイント:80%の消費者が何らかの方法でグリーン化しているという結果がでているものの、どのグリーン商品の購買に意欲的なのかという点においては個人差が見られる。多くの人が節水、エコバッグ利用、自転車活用、そして電気製品のコンセントを抜くといったことに配慮している。

カウンターポイント:全ての人が100%ロハス化することは不可能だろう。

- 社の商品や製造過程 をグリーン化することにフォーカスすべきか?

ポイント:商品はブランドそのものである。もしそれが偽ナチュラルであれば80%の消費者はそれを見抜き見限るだろう。30%の消費者はグリーンな原料からサステナビリティを連想する。この数字は伸びて来ている。サステイナブルな包装方法も消費者の重要な関心事だ。

カウンターポイント:グリーン化によっていくつかの商品は更にフットプリントを拡大する恐れがある。例として、ガムを考えてみる。ガム自体は取り立てて環境汚染の原因になるような物質ではない。しかし、その製造過程は多大なフットプリントを発生させる(ガムの原料採取による熱帯雨林への影響、製造過程で使用する膨大な水資源、物流にかかるカーボンフットプリントなど)。商品の製造過程をグリーンにすることはあなたの会社にとって利益になるだろう。

- 世界的ロハスのチャンスは何だろう?

ポイント:最もロハス消費者層の割合(パーセンテージ)が多いのはアメリカである。エネルギーや交通の市場は伸び続けているし、アメリカは依然として世界最大の経済圏である。

カウンターポイント:発展途上国は大きなチャンスを提供している。中国には16,400万人、インドには9,600万人のロハス消費者層が存在する。人口数で見るとアメリカのロハス消費者層はたったの4,400万人、そして世界で最も価格設定に敏感だ。発展途上諸国はグリーンに関する情報を渇望している。

- 消費者への情報提供のバランスをどうとっている?

ポイント:消費者は事実を知りたがっている。多くは混乱している。

カウンターポイント:世界には375もの「グリーン認証」のマークが存在する。消費者の50%が認証マークが多すぎると感じている。消費者の60%が世界基準の認証マークが好ましいと感じている。

以上何点かテーマを抜粋してご紹介しましたが、私個人的な意見としては、NMIは例年良質な情報を提供し続けてくれているものの若干アメリカ市場に偏ったものが多いと感じました。 欲を言えばもう少し、世界の動向に関しても情報を提供してほしいと思います。

たくさんのグラフやデータを見終わって少々目が疲れました。ランチ休憩の前に、リオ・ルーシーフーリー・ウィルソン氏によるスラムポエット「ガーデン・オブ・ガイア」が朗読されました。こちらは別の会場で録画された「ガーデン・オブ・ガイア」のパフォーマンスです。http://www.youtube.com/v/_TNPgDox-ro?version=3

スラムポエットは80年代にシカゴで始まったパフォーマンスを交えて朗読される情熱的なポエムです。ポエムの中の「花の蜜を蜂が愛すように、この地球が創造したもの全ては動物達に愛されています」という一節に私は心打たれました。そう、私たち人間が生み出してしまった無機質な異物は決して動物達に愛してもらえないのだ、と。

彼のポエムに心癒された後、もう一つ忘れてはいけないイベントがありました。

ロハスビジネスコンテスト決勝戦

予めロハス会議実行委員会によって選考された3人のファイナリストたちのプレゼンテーションが紹介されました。優勝賞金1000ドルとマーケティング助成金10,000ドルをかけて、私たち一般参加者の投票によって優勝者を決定されます。

<ロハスビジネスコンテスト2011ファイナリスト>

1、runa Amazon Guayasa社:フェアトレードのエネルギードリンクメーカー。アマゾン保全をミッションとする。http://www.runa.org/

2、maternova社:発展途上国の医師や看護士用に予め出産用の医療用品をセットにして提供する団体。大変興味深い活動内容で、私はこの団体に投票しました。http://maternova.net/

3、 Kaivalyaメディテーションやヨガ、ビジネススキルの学びを通じて受刑者の更正、再教育を目指す団体。http://insideoutfreedom.wordpress.com/

それぞれ、ファイナリストにふさわしい興味深いプレゼンテーションでした。ウェブ上の投票アプリケーション(http://lohas2011.quickmobile.mobi)が故障するというちょっとしたハプンニングもありましたが、私も一票を投じたmaternovaが圧倒的票差で見事優勝。 この故障した新しいアプリは技術的には新しすぎたのかもしれませんが個人的には良いアイデアだと思いました。ソーシャルメディアとしての機能も充実していたので来年に期待したいです。ロハス会議は以前から 「ペーパーレス」を実現させるべく活動しています。紙媒体の広告やパンフレットを排し、ウェブ上やメモリースティックでデータを配布し、できるだけ紙媒体以外の方法で会議を運営しています。この「ペーパーレス」な企業活動は今後の日本のコンベンションシーンでも注目を集める日がくると思います。

スチームサーモン、トマトスープ、グリル野菜のオーガニックランチを堪能した後、いくつかの分科会セッションに参加しました。 

講演名:「未来へようこそ-Welcome to Futuretopia」

マシュー・パワー氏/グリーン・ビルディング・マガジン編集長

パワー氏は未来の商品デザインのテクニックについていくつかの戦略を提案してくれました。

  • トップダウンではなく、ボトムアップの商品デザイン(例:何故電子レンジにはこうもたくさんのボタンが必要なのか。多くの人はそのうち1つか2つしか実際には使用しない。
  • アップグレードは必ずしもイノベーションには繋がらない
  • 隠れたコストを無視するな。(製造、廃棄過程の見直し)
  • アップサイクルできる商品のデザイン(使用後にアップサイクルすることで道路の材料になるような作りのタイヤ)

成功する商品がどのようにデザインされるべきかの多くの実践的なアドバイスに溢れており、パワー氏の講演は非常に興味深いものでした。テクノロジーの進歩が氏のアイデアを実現することを願ってやみません。

対談名:「成長する'シーコノミー'-The Growing Sheconomy」


ダイアン・マックイーチャン氏/ビッグ・グリーン・パースCE

グレッチェン・ブレイラー氏/オリンピックスノーボーダー

ティナ・ウェールズ氏/バズ・マーケティング・グループCEO

マーガレット・マックアリスター氏/レッド・ケイト・ビジネス・アドバイザーズ共同創始者

4人の女性パネリスト達によるディスカッションで、「She」と「Economy」を併せた「Sheconomy」という造語が印象的でした。しかし残念ながらオープニングスピーチのヒューストン博士のお話と大部分重複していて新しいものは発見できませんでした。職場での女性の活躍の場が広がっていること、それが男性主導で解決し得なかったビジネスや政治が直面している問題へ新しい目線でアプローチする機会を与えていることなどが議論されていました。このようにロハス会議では同じ時間帯にいくつもの分科会が開催されており、自分の選択によってはテーマが同じものを選んでしまったり、期待はずれのものを選んでしまったりというハプニングも起こります。もちろんその反対に期待していなかった部分で大きな感激を味わうこともありますが。例えば私の場合、ディスカッション自体にはあまりのめり込めなかったものの、会の最後にパネリストの一人、トリノオリンピック銀メダリストのスノーボーダー、グレッチェン・ブレイラーさんと記念撮影をする幸運に恵まれました。とても美しい方で国内では有名な選手です。

講演名「「自分を売り込めますか?-So You Think You Can Pitch? Prove it!」

ケイティ・シーガー氏/シーガー・メディアグループ創始者

テリー・トレスピシオ氏/ホールリビング紙シニア編集者

ピラー・ジェラシモ氏/エクスペリエンス・ライフ・マガジンチーフ編集者

ウェイロン・レウィス氏/エレファント・ジャーナル創始者

「もしあなたの会社が雑誌の取材を受けたとしたら、どのように自分の会社を紹介するか」というテーマでアドバイスに満ちた講演でした。各自具体的に自社のアピール事項を考え、会場の一般参加者から4〜5名の発表者を募って発表された。そしてそれぞれの発表に対して4人の講演者たちが訂正、過失を加えパーフェクトな回答を共同作業で練り上げました。私も心の中で自社紹介の趣味レーションをしましたが照れくさくて挙手はしませんでした。とても為になりましたが、欲を言えばもっと頻繁に必要になるシーン(例えばこの会議でしばしば遭遇するネットワーキングイベントで使える簡単な自社紹介方法のアイデアなど)について教えてくれるならもっと実用的だったなという感想を持ちました。

この夜は、会議最終日に閉会式コンサートを開催するフレディー・ラベルさんと連れ立ってボールダーの町へ繰り出し「The Kitchen Upstairs」というオーガニックレストランバーで夕食を楽しみました。素晴らしい夕食に舌鼓を打ちながら彼の音楽哲学を拝聴しました。彼の音楽は4つの要素から成り立っており、その要素は私たちの人生に置き換えられます。メロディはリーダー、ハーモニーは他者との強調、リズムは自分自身のペース、楽譜はそれらをまとめるもの。しかし、ラベルさんは「私たちはもう一度メロディを見直す必要がある」と主張します。願わくば未来のリーダーにはこのロハスフォーラムのレポートを読んでくれるような方に登場して頂きたいものです。

photo by www.elephantjournal.com  その日に仕入れた地元オーガニック食材が並ぶThe Kitchenのメニューボード)

ラベルさんとの夕食の後、エレファントマガジン編集長のウェイロンが主催するプライベートパーティに顔を出しました。ボールダーらしく、それぞれの歓談をリラックスして楽しんでいました。さあ、明日こそモーニング・ヨガに参加すべくこの辺で帰宅して就寝しなくては!

Day3 624日(金)

早起きして会場に向かうとまだ誰も来ていませんでした。昨晩のウェイロンのプライベートパーティが遅くまで盛り上がり、みんな二日酔いで寝坊しているのかなと思いました。静まり返った会場をブラブラしていると、一つの部屋でモーニングメディテーションのセッションが行われていたので私も参加してみました。


「ハート・リズム・メディテーション」と呼ばれるセッションで呼吸法を学びながら自分の心臓の音に集中するメディテーションです。45分のセッション後、心がクレンジングされエネルギーが再起動されたように感じました。

講演名「人生の教訓-The Business of Living -- on Purpose

ダン・ミルマン氏/トランポリン元世界チャンピオン、自己啓発作家

この朝一番の基調講演はトランポリン元世界チャンピオンで自己啓発本『聖なる旅-ピースフル・ウォリアー』著者のダン・ミルマン氏。今年65歳になるミルマン氏は舞台に駆け上がって登場し椅子の上で逆立ちをしてみせました。 ミルマン氏は自身のことを「アスリート、そしてコーチとしては成功したが、成功したのはあくまでその部分だけ」と評価します。自分が掴んだ一部の成功をどうやって人生の他の方面へ向けることができるかについて学びたかったと言います。 成功するためには自分は何が得意なのかを知り、そしてその分野において自分自身をプロモーションする能力に長けている必要があると気づいたそうです。この2つの考えをふまえた彼の4つの人生の教訓について教えてもらいました。

  1. 人生レッスンに学べ。人生とは、己の経験から何かを学び続ければ決して落第することのない学校のようなものだ。失敗はステッピングストーン(前進するための手段)と心得よ。
  2. 「キャリア」と「自身が欲するもの」を見極めろ。「キャリア」=「自身が欲するもの」でなくてもいい。キャリアは収入を得るためのもの、それを愛する必要はない。「自身が欲するもの」とはあなたが愛する何か。そして、自分以外の誰かのために何かをするということは何ものにも変えられない充実感をあなたに与えるだろう。
  3. 山には43もの道がある。自分の道を見つけよ。(彼の本を読んだことのない私は正直何故43なのかがわかりません。要確認ですね。)
  4. 一瞬一瞬に注意を払え。今を生き、全てのことに全力を尽くせ。

最後の項目について彼は自分の体験を詳しく語ってくれました。 ある大会で彼は完璧な演技と完璧な着地を成し遂げました。しかし競技の終え、ロッカールームへ戻ろうとしていたとき、コーチから「なんていい加減な演技だ」と心外な言葉を投げつけられました。コーチの真意が分からず、なぜそんな風に言うのかとコーチに問いただしました。あんなに完璧な着地だったのにどこが不服なのかと。そしてコーチは、彼が演技を終了した後、場外に出て、脱いだ上着を無造作に丸めてバッグに突っ込んだことを指摘したそうです。「君は競技しか目に入っていないが、私は全てのことを鍛錬と心得ている」と。

私が昨日出会ったスノーボードのグレッチェン選手もミルマンの本とそれを元にした映画「ピースフル・ウォーリアー」が大好きだと言っていました。そんな彼女の素晴らしい滑りの映像がこちらです。こういう人たちに出会える、それがロハス会議なのです。

講演名「待ちわびた変化へのシフト-2012: The Shift We Have Been Waiting For; How to plan for extraordinary change

ジョン・ピーターセン/'未来学者'、アーリントン・インスティチュート創始者

大きな変化に対応するプランを提供するいわばコンサルタント団体「アーリントン・インスティチュート」を主催するジョン・ピーターセン氏は「未来学者」と呼ばれています。深遠で科学的な視点で未来を事前に予測するのです。彼の「銀河系の気候変動が太陽黒点の活動や北極光、 磁極に影響を及ぼす」という主張や「人類は今後10年の間に、20世紀の間に体験した全ての技術進歩の80倍にあたる進歩を体験するたろう」という見通しに関してはうっかり鵜呑みにすることは出来ないと思いましたが、これから来る変化に我々がどう準備するべきかについて5つのポイントを示してくれました。

  1. とにかく考えること。「考えない」ということはもうそれだけで進展が望めない。
  2. 変化が起こる前に考えることが肝心である。変化が起こってから考え出してもその多くは無駄になる。
  3. すべての出来事には前兆がある。
  4. あらゆる情報へいつでもアスセスできること、そしてその情報を理解することが重要である。
  5. 大きな事象には大掛かりなアプローチが必要になる。

ピーターソン氏が言いたいことは「大きな変化が近々到来する」ということでした。人類が未だかつて経験したことがないくらい大きな。これを生き残るためには、機敏に、革新的に、柔軟に、そして洞察力を持ち、過去から学ぶ姿勢を身に付けること。これら全ては当たり前のことですが、彼の話し方は大変専門的で複雑でした。彼のスピーチを録画したので、編集が終わり次第みなさんにもご覧いただきたいと思います。

講演名「信頼性と無秩序性-Authenticity and Anarchy: A Civic Approach to Branding That Drives Behavior Change 

ジョン・ルークス氏/ザ・ソープ・カンパニーCEO 


今回のロハス会議で私はいくつかのセッションを専門のカメラマンにお願いして撮影し、現在編集作業を行っています。撮影する講演を選出するに辺り、このロハス会議の主催者でありロハスマガジン編集長であるテッド・ニン氏が私に推薦してくれたのがこのジョン・ルークス氏の講演です。

マーケティング会社、ザ・ソープ・カンパニーの代表であるルークス氏は「大きな複合企業が'グリーンはイージー''グリーンはクール'といった戦略を使い、いかにして'グリーン'をメインストリームに仕立て上げるか」についてスピーチしてくれました。ルークス氏は市場に出回る商品は私たちの意思に関係なく、昼となく夜となく24時間365日私たちに影響を与えていると主張します。企業は私たちが見るもの考えるものを作り上げて左右する、言うならばそれはもう映画「マトリックス」のようなものだと。サステイナブルな世界を目指すため、私たちはこのからくりに気づきそして主導権を握らなければならないでしょう。オーセンティックなやり方でグリーンのコンセプトを広めるために。これを実現するためにルークス氏は3つの示唆を与えてくれました。

  1. 価値観を逆転させよ。消費者が商品について何かを言うのではなく、商品が消費者に語りかけるようにする。
  2. 透明な会社に。例えば、商品に原料費、営業経費などの諸経費や一商品あたりの会社利益などを表示したらどうだろう?商品によっては消費者の支払った代金の90%がブランド名につぎ込まれていることを知るかもしれない。判断を消費者に委ねるのだ。
  3. サステイナブルな会社にするために社内での競争を活発化させよ。まずは内からサステイナブルを実践すべし。

ルークス氏の講演は素晴らしいものでした。マーケティングとブランディングについての深い議論、そして彼の語り口自体も優れていました。 公演中、モニターには常に様々な映画のワンシーンが流され、一度も彼はリモコンを使わなかったにも関わらずモニターの映像はいつも彼が触れるトピックにピタリと合致していました。後から聞いたところによると、アシスタントがモニターの後ろで彼のスピーチに合わせて映像を流していたそうです。大変面白い演出でした。みなさんも後日編集映像にてお楽しみください。

ここで一旦食事にしました正直に言うと、ランチの後のいくつかのセッションは少し期待外れなものでした。政府によるサステイナブルな経済の構築について-Building a Sustainable Economy through Public Policy」と題された講演は、各業界を代弁してワシントンDCにおける政策策定に影響を及ぼすという事業を行っている企業の宣伝でした。政府への働きかけをする運動への参加を勧誘するようなニュアンスが強く、私は抵抗感が否めませんでした。2つ目の広告会社による「ストーリーの力-The Power of Storytelling」という講演は自社とエコツーリズムについて3つか4つのテレビコマーシャルが上演されただけでした。この2つの講演については残念ながら身が入らず、自分で書籍などから情報を得られる程度のものだなというのが素直な感想でした。ロハス会議といえども、全ての講演が素晴らしいとは限りません。どの講演を選んで聴講するか、それはあなたの賢明な選択にかかっています。それが面白いところでもあります。

講演名「加速する世界の規格外な企業家たち-Accelerating the World's Most Unreasonable Entrepreneurs

ダニエル・エプステイン氏/アンリーズナブル・インスティチュート代表、 SWAEスポーツCEO

幸いにも私が次に選択したこの講演は大当たりでした。エプステイン氏は世界中(しばしば発展途上国)から企業家を探し出し、彼らの操業開始間もない会社の経営が軌道に乗るまでの間、必要なリソース全てを提供するというプログラムを開発しました。まさにこのロハス会議中、複数名の企業家をボールダーへ連れて来て6週間の集中研修を行っています。メンタリング、ビジネストレーニング、そして資金調達の場の紹介など、様々なチャンスを提供しています。研修生の一人は、アフリカで井戸水を簡単にくみ上げそして家まで運ぶ装置を開発販売しています。アメリカでは水汲みは女性の仕事ですが、その肉体的負担の重さと井戸と自宅の度重なる往復による外出時の危険が社会問題になっています。現状を改革したいと熱望しながらも、先進的すぎるが故にまだ彼らの故郷では理解されない埋もれた才能を見いだし、人権や貧困などの社会問題へのアプローチをも内包している彼らの素晴らしいビジネスアイデアを育てているのです。

彼らは6週間ずっとメンターと呼ばれる指導者と一緒に暮らし、コラボレーションとチーム・シナジーについての考え方を学びます。エプステイン氏はわざとできるだけ不定形なプログラムをデザインし、創造性に溢れた環境を出現させようとしています。私は以前地元紙でこのプログラムについての記事を読んだことがあり、今回こうしてエプステイン氏に会えたこと、更に掘り下げて氏の活動を理解できたことを嬉しく思います。研修生達はボールダーに到着したばかりで、ロハス会議で氏とともにそれぞれの事業アイデアを発表していました。

研修生の一人、ウガンダから来たモーゼスは今回のボールダー行きに際して、彼の一族の中で初めて飛行機に乗った人物になったそうです。彼の目は爛々と輝きびっくりした様子で会場を見て回っていました。しかし、彼のスピーチはたいへん堂々としてかつ明確なものでした。彼の会社はウガンダの貧しい家族に高い効率性を持つ焼き釜をリースし、そして釜から出たゴミを買い戻しそこからチャコールを作っています。チャコールは地元企業へ売られ、その利益は植林に使われます。

今年のロハス会議最後の講演の前に、テッド・ニンが登場し「この瞬間を楽しみ、今を感じてください。そしてここで見聞きしたものをこの場で終わらせずに、みなさんがそれを持ち帰り今後に活かして下さることを祈っています」とこのフォーラムに託した想いについて語りました。フレディ・ラベル氏の音楽パフォーマンスを挟み、最後の講演を行うパタゴニアCEOのケーシー・シーハン氏が会場に登場しました。

講演名「基調講演 コンシャス・リーダシップとは内なる仕事-Keynote - Conscious Leadership Is An Inside Job

ケーシー・シーハン氏/パタゴニアCEO

会場中が立ち上がり拍手でシーハン氏を歓迎しました。スピーチは3年前に彼が体験した個人的な出来事を物語ることから始まりました。世界同時不況の始まり、企業として生き残るためにパタゴニアでも多くの従業員を解雇しなくてはならない状況に直面していました。彼は従業員を家族同然に考えており、これは大変困難な決断となるはずでした。この問題をシーハン氏が妻に相談したところ、彼女は「あなたが今下そうとしているその決断は恐怖の上に成り立っているのでしょうか」と聞いたそうです。そして氏は全くその通りだと気づきました。彼だけでなく、当時経済崩壊に瀕しているように見えた国中全てがそうであったように。彼は恐怖に基づく決断ではなく、愛に基づく決断をすることに決めました。とたんに物事がクリエイティブに見えて来たそうです。従業員の役割を再構築することによって大量解雇を回避し、驚くことに、この3年間は創業以来最も業績の良い数年間になったのです。もし大量解雇を実施して労働力を欠いていたとしたら、予期しない需要増大に対応できず、今手にしている成功はなかっただろうと言います。そして彼は私たちに彼の人生において価値のあるもののリストを綴った「マインド・マップ」を披露してくれました。シーハン氏は会場の私たちにも自分のマインド・マップを作成してそれを人生に役立てるように勧めました。

私がパタゴニアに興味を感じ、そしていつも称賛の念を感じるのは、同社が「透明性」ということを実現した最初のブランドだからです。彼らは「ジャケット一枚を作るのにどれだけのカーボンフットプリントが発生するか」などのストーリーを彼ら自身が語らなければ、いつかきっと彼ら以外の誰かがそれをするはずだと気づいたのです。もしそれが決して完全なるグリーン商品だと言えないものだとしても、それを正直に消費者に伝え、これから更に責任あるサステイナブルな会社として発展して行こうとしているかを分かってもらうという姿勢を貫いています。消費者はその企業姿勢を支持し、さらに同社の商品を愛するようになりました。

最後に会議主催者のテット・ニン氏にコメントをいただきました。

テッド・ニン氏のコメント

Q: 昨年にくらべて今年の会議はどうでしたか?何か変化は見られましたか?

A: より親密な集まりとなり、内容の濃いネットワーキングやビジネスリーダー達のためのロハス・コミュニティとして強い連帯感を提供する場になったと思います。それぞれのリーダー達は決して一人ではないこと、異なる地域で自分以外のリーダー達も戦っていることを気づいてもらえたことでしょう。「カジュアルさと専門性のブレンド」がいつもロハスの基礎であり強みですね。

Q: 日本およびアジアのロハス市場に今後数年の間に到来するだろうトレンドについてテッドさんが想い描いているものはありますか?

A: 私たちは皆、世界はチャレンジの場であると認識しています。ビジネス界にとって、今がまさにアクションを起こす時です。消費者との意思疎通を促進し、利益に固執するだけでなくコミュニティにどのような貢献ができるかについて更に検討する時期がきていると思います。企業の透明性、消費者やコミュニティとの相互作用の深化と言い換えることができますが、これらは今世界的に起こっている変化なのです。ロハス消費者のニーズに応えながら、このビジネス界の変化の波に乗り遅れないよう対応することが日本をはじめアジアの輝かしい未来につながることでしょう。



取材後記

この3日間はインスピレーションと新しいアイデア、そして新しい人たちとの出会いに満ちあふれていました。自分自身の会社の今後の経営に役立てられそうなたくさんの新しいコンセプトとサステイナブルな経営方法を毎日家に持ち帰ることができました。そしてネットワーキングの成果であるこの大量の名刺の束!出会った全ての人へ、フォローアップのEメールを送らなくては...。Eメール?なんだかEメールがとても原始的なツールに思えて来ました。ヒューストン博士が会議の冒頭に演説し、会議中何度も耳にした「人類史上最大の変化の時代に我々は活躍のチャンスを与えられた」というフレーズ。この星には変化の時を上手に乗り切り、新たな繁栄の未来に導いてくれるための適任者が存在すると実感します。改善すべき点をあげるなら、それは我々は更に緊密に繋がる必要があるということでしょうか。もはや我々が個別に成し遂げられるものはたかが知れています。バーチャルに、そして直接的に顔を合わせるこの会議のように、あらゆる手段で繋がりましょう。そうすれば私がこのロハス会議で感じた熱心で輝くばかりのエネルギーは効果的に効率的に世界中を駆け巡り、来るべき変化を適切に迎え撃つ推進力と基盤を与えてくれるでしょう。


取材:Sam Goodman サム・グッドマン

Colorado House International, LLC 副代表。コロラド州出身。コロラド大学ボール ダー校心理学部を卒業後、約5年間シンガポールと日本の公立及び私立の小中高校、 各種企業・政府機関で英語を教える。帰国後、ロハス発祥の地コロラド州ボール ダーで起業。エコやグリーンをテーマにツアーを企画する傍ら環境問題やライフスタ イルに関するコラムも執筆中。 ウェブサイト:www.coho-online.com


訳:Tomoko Goodman 知子・グッドマン

Colorado House International, LLC 代表。神奈川県出身。桐蔭学園高校、東洋英和女 学院大学社会科学部卒業後、東京と京都で6年間不動産会社と経営コンサルタント事 務所に勤務。結婚を機に米国へ移住、夫サムと共に起業。一児の母。ブログ「ボールダー ざんまい(www.coho-online.com/wp)」でボールダーのロハスな情報を発信中。


on 2011年9月24日 in お知らせ・最新情報